<<詳細版>>No.1:オミクロン対応 BA4/5 ワクチンも無効の証拠

BA4/5対応ワクチンも無効の証拠が現れる

薬のチェック104号[1]では、短期シリーズ「ワクチン、打つ?打たない?もっと知ろう」その1の冒頭で以下のように述べました。

SARS-CoV-2(新型コロナウイルス、以下「コロナ」)のオミクロンBA1 株対応ワクチンの接種が始まりました。いわゆる「コロナ」ワクチンは効く?安全?を、今ほど多くの人が知りたいと思っている時期はないでしょう。本誌の判断は、「全く無効で害だけ。打ってはいけない」。そのことを示す確実なデータがあるからです。

番外編No.1の記事を読む前に最低限の知識として、以下を心得ておいてください。 中国の武漢に起源をもつ「コロナ」ウイルス(SARS-CoV-2)を起源ウイルスといいま す。そして、当初から接種に使っている「コロナ」ワクチンは、この起源ウイルスに対す る抗体を作らせるものですので、「起源ワクチン」と呼びます。 では、「BA4/5 ワクチンも無効」と結論した主な理由を述べます。

①オミクロン変異ウイルスには無効になったとの確実な証拠があります。
②重症例に効くというのは、健康者接種バイアスを無視しているためです。
③起源ワクチンを打った人にオミクロン対応ワクチンを打っても、起源ウイルスに対する抗体が多くできるだけで、最初の起源ワクチンが、オミクロン抗体をできにくくしているために、オミクロン株ウイルスに感染します。
104号総説では、これらのことを、データを示して解説しました。

上記③の現象は、国の会議でも話題になりました。「初抗原原罪原理」という理論で

す。英語で“The doctrine of original antigenic sin”といいます。

今回、「コロナ」ワクチンを接種していても、オミクロン株ウイルスによる世界的な第6波、第7波の流行にはほとんど無効であった現象が、「初抗原原罪原理」で説明ができます。

BA4/5 対応ワクチンも無効の証拠が現れる

薬のチェック104を校了した時点では、BA5対応ワクチンに関するデータが不十分だったのですが、明瞭に無効を示すで―タが、2022年10月24日に未査読論文掲載サイトの一つBioRxivで公開されました。そのデータも併せて速報します。BioRxiv原文 要約翻訳
まずは、未査読論文のデータが最もわかりやすいので、そのデータを、お見せしましょう。

未査読論文では、
①起源ワクチンを3回接種した人
②4回接種した人(平均55.3歳)
③起源ワクチン3回+4回目にBA4/5二価ワクチン接種(平均36.4歳)
④起源ワクチン接種後にオミクロンBA/5ウイルスに感染した人
を対象に、それぞれのウイルスに対する中和抗体価を測定しました。

起源抗体が一番高く、BA4/5はその5分の1

みなさんの関心は、圧倒的に、BA4/5対応ワクチンが、BA4/5オミクロン株ウイルスの感染防止に効果があるかどうかでしょう。

原著論文では、FigureBに、起源抗体と、BA4/5抗体を比較した図があります。その図から、最も重要な4回目の接種として②起源ワクチンを接種した人と、③BA4/5ワクチンを接種した場合で、中和抗体価を比較したデータを抜き出して図1に示します。

図1:起源ワクチン4回と、3回+BA4/5ワクによる抗体上昇の比較
原著[2]のFigure 1Bより翻訳、一部抽出。起源ワクチン4回と、起源ワクチン3回+BA4/5ワクチンによるBA4/5抗体の上昇は、まったく差がなかった。起源抗体は、起源ワクチンのみがやや多かったが、統計学的な差は有意でなかった。起源ワクチン3回+BA4/5ワクチンを接種した場合の、BA4/5抗体の上昇は、起源抗体の上昇の5分の1に過ぎなかった。

4回目の接種として起源ワクチンを接種した人と、BA4/5ワクチンを接種した人で、BA4/5抗体の上昇は、まったく差がありませんでした。BA4/5ワクチンを接種した場合の、BA4/5抗体の上昇は、起源抗体の上昇の5分の1に過ぎませんでした。そして、起源抗体の上昇は、起源ワクチン追加がやや多かったけれども、統計学的な差は有意ではありませんでした。
BA4/5ワクチン接種者の方が若く、若い人が高齢者よりも抗体ができやすいので、BA4/5ワクチンで、高い抗体価が期待できるのにかかわらず、差がありませんでした。
したがって、起源抗体の代わりにBA4/5ワクチンを接種する価値はまったくないということを示しています。
以上のデータだけでも、オミクロン対応ワクチンが無効であることをほぼ語りつくしています。データを詳しく知りたい人のために、以下に、さらに詳しい図を示しておきます。

どの場合でも最も多くできるのは起源抗体

どのワクチンを接種しても、オミクロン株ウイルスに感染しても、SARS-CoV-2の起源株や変異株に対する抗体で一番多くできるのは、起源抗体です(図2:原著のFigure 1Aより翻訳、改変)。

図2:ワクチンの種類、回数、感染別の各種抗体価
原著[2]のFigure 1Aより翻訳、改変。 D614G:起源抗体、BA2.75.2まではSARS-CoV-2ウイルス(に対する抗体)。SARS-CoVは、2003年に流行したSARSウイルス。

BA1対応ワクチン追加と、起源ワクチン追加の比較も同様

BA1対応ワクチンでも同じようなことが確認されています。104号総説の図5がその一つです。ここでは図3として示します。これは、BA1対応二価ワクチンが特例承認された際に国が審査した報告書[3]のデータが元になっています。

図3:BA1二価ワクチンによる抗体価の上昇(起源ワクチンとの比較)
文献[3]、コミナティRTU、特例承認に係る報告書のデータを元に、薬のチェック編集委員会で作図。もともと起源ワクチンを3回接種していた人に、4回目として、起源ワクチンを追加した場合と、BA1二価ワクチンを追加して場合の、起源中和抗体価と、BA1中和抗体価の比較。追加接種として二価ワクチンを接種しても、できる抗体はほとんどが起源抗体であり、BA1抗体は起源抗体の8分の1しかできない。起源ワクチンを打った場合の1.6倍でしかない。

参考文献
1)薬のチェック編集委員会、短期シリーズ「ワクチン、打つ?打たない?もっと知ろう」その1
  薬のチェック、22(104):128-139
2)Wang Q. Antibody responses to Omicron BA.4/BA.5 bivalent mRNA vaccine booster shot. 
3)コミナティRTU、特例承認に係る報告書